耳鳴り外来


瞬きの音、つばを飲む音聞がこえますか?我々高等な人間には様々な音に対して無意識で識別する力が備わっています。
いつも存在する大きな音(瞬き、嚥下音)は生まれたときから存在し無害であるとわかっているので気にならない。しかし一度車に轢かれそうになった経験があると、その車の音には車がどんなに多くても、どんなに無害でも敏感に反応します。これは我々人類が進化の過程で勝ち得た特質でもあります。
大脳皮質下という所では無意識に音の識別が行われているとされています。この仕組みには感情も関わっており、車の近づく音に対して、恐怖感が強いとさらに敏感に反応します。
耳鳴りも一旦、自分にとって有害な音とインプットされると、脳は意識の中に鮮明にその音を浮かび上がらせると伴に感情の関わりのもと、自律神経にも影響を与えるわけです。
この悪性サイクルを断ち切ることが耳鳴の治療です。
急に始まった耳鳴り以外、殆どの耳鳴は害の無いものです。
耳鳴の治療は安心な耳鳴りであると診断することから始まります。
まず他覚的耳鳴り、または治療が必要な別の疾患があるのかを鑑別していきましょう。
頚動脈エコー、血圧測定、心電図、ABR、MRIなども場合によっては必要でしょう。
異常があればそれぞれに対処します。
TRT 指示的カウンセリングと音響療法
耳鳴りの自己増殖悪性サイクルを
解きほぐすことを目的とする治療
「TRT」とはTinnitus Retraining Therapyの略です。 直訳すると「耳鳴りの再訓練療法」となります。
これは、先程の耳鳴りの自己増殖悪性サイクルを解きほぐすことを目的とする治療で約7割の患者様に効果を認めます。
「耳鳴り自己増殖悪性サイクルを減らす治療」と考えてください。
TRTは、指示的カウンセリングと音響療法からなります。
いわゆる皆さんが想像するカウンセリングとは異なります。
耳鳴を理解するために講義を聴くようなものです。
指示とはそういう意味合いです。これは耳鳴りに順応するための準備段階の治療です。
■耳鳴りに関する基本情報(有病率など)
■器質的疾患の有無
■既知の耳鳴りの煩わしさについて、そのメカニズム(難聴との関係)
■聴覚システムがどの様に機能しているかについて
■患者様の病歴、THI、聴力評価から得た情報のまとめ
■補聴器による音響療法の意味とその効果
■経過・予後
■その他、患者様が知りたい情報や疑問について
以上を医師、看護師、補聴器技能者が数回に分けて行います。
一度に全てが出来ないことをご了承ください。

ノイズや別の音で耳鳴りをまぎらわす治療を意味します。
当院では難聴がある場合、初めはサウンドジェネレーターによるノイズを試用せず、補聴のみで様子を見ます。
補聴のみで有効な場合もかなり多いです。
この場合非常に適切な聴力障害に対する補聴器fittingが必要なことは言うまでもありません。この点最近の補聴器は性能の高い物が多く以前よりも明らかに負担が少なくなっています。
聴力が正常な場合には音源の種類にこだわる必要はあまりないようで、ipodのような携帯音楽ブレーヤーを提案することもあります。
患者さまの状態による推奨治療プラン
健聴で耳鳴り
●耳鳴りのカウンセリングと指導
●特定の困難さに関して相談する追加カウンセリング(思考と感情、聞こえ、睡眠、集中力)
●音響療法
●フォローアップケア
【留意事項】
健聴な患者様は、多くの場合カウンセリングと指導だけで効果が得られます。
また、合わせて音響療法を提案することもあります。
耳鳴り+難聴もあり
●補聴器
●耳鳴りカウンセリングと指導
●フォローアップケア
【留意事項】
多くの耳鳴り患者様は、聴力にも問題を抱えています。
その場合、補聴器だけで耳鳴りが軽減することが多いのはよく知られております。
以下の症状が見られる場合
●自殺念慮
●明らかな精神機能障害(例:うつ病、不安神経症)
●その他、患者様の精神安定に問題がある場合聴覚専門家の分野ではないため、専門の精神科医へ迅速に紹介します。